DIGITABLE 七月定例勉強会 ーその3 ー 

またまた19 日のDIGITABLE 勉強会からの引用でデジタル初心者のための「レイヤーの研究」。ズボラな同作者によるものなで引用は一向に構わない。ご好評?なのかリクエストがあったので、抜粋して述べてみよう。

*レイヤーとは?

「レイヤー」とは透明なシートのことだ。複数のレイヤーを重ねると「アニメのセル画」のように1枚の合成画像として表示される。また、「レイヤー」パレットでレイヤーの上下関係を入れ替えると、表示画像の前後を入れ替えることができる。

Prt05_Self_C.jpg

筆者のセルフポートレートによるレイヤー合成の説明
*レイヤーの効果

レイヤーは単純に切り抜いて重ねるだけではなく、さまざまな画像を重ねる「効果」が選べ、またその透け具合が「不透明度」の%で調整することが出来る。
さまざまな「効果」のうち、通常、比較暗/ 明、乗算、スクリーン、オーバーレイ、輝度などを覚えておくとよいだろう。

Prt04_yanaka_kansei.jpg

調整レイヤーのマスク機能を使った部分補正
*レイヤーを利用した合成

レイヤー濃度や、さまざまな効果を利用すると手の込んだ合成作品が可能だ。実際に使用された作者のセルフポートレートの合成作品を見てみて、レイヤーの効果や機能を理解しよう。
これらの合成作品は10 年ほど前に当時のPhotoshop で苦労して作られたものだが、今日のバージョンとPC の作業環境なら、コツをつかめば厳密な切り抜きなどに苦労することなく、短時間で楽しく作業できる。
尚、作例はPhotoshop Elements 6 にて講座説明用に作業し直したものだ。

Prt11_bubunkansei.jpg

元写真はシャープだがやや硬い印象だ
レーヤーの部分 処理で「深度の調整」効果を試みた

*調整レイヤー

今日のレイヤーには画像を合成するだけでなく補正するための機能も搭載されている。それが「調整レイヤー」だ。
先月の「Photoshop による基礎調整」では8bit のJPEG 画像に直接、「レベル補正」、「トーンカーブ」、「色相・彩度」を施したが、今日の作業フローでは調整レイヤー上でそれらの補正を行なう方が多い。調整手順は先月と全く同じだが、調整レイヤー上なら何度でも呼び出してやり直しや追加の補正が出来、また全体の効き具合の濃度も調節出来る。
それぞれの結果は、実データ上は画像の書き出し(統合など)にまとめて反映されるので、補正のやり直しによる画像の劣化も最小限に抑えられる。

*調整レイヤーによる部分補正
通常の補正機能と異なり、部分的に補正できるものも「調整レイヤー」の特徴だ。
適応部分のマスク機能を使用して、調整レイヤーを「黒」で描画すると、描画の濃度に比例しての補正が除外される。つまり、残った白やグレーの部分に補正が適応る訳で、マスクはあたかも適応の「フィルター」のような働きをする。描画は通常ブラシツールを使用して行なえばよいが、ブラシの径や濃度を上手く使えば、かなり大雑把自然な補正が得られる。

*レイヤー複製からの部分処理

通常のレイヤー機能のうち「レイヤーの複製」を使ってさまざまな調整が可能だ。「スクリーン」や「乗算」を使えば露出の調整に利用できるし、部分的にテイストの調整も出来る。作例では複製レイヤーを「ぼかし=ガウス」で大きくぼかし、画像の中央部のみをなだらかに切り抜いたもので、簡単な作業で「深度の調整」効果を試みている。

DIGITABLE 七月定例勉強会 ーその2 ー

前述した19 日のDIGITABLE 勉強会で平野氏が「色調調整後の色相彩度」について言及されてたので、当方の研究?分野でもあり、同勉強会のレポートから引用する。

*色調調整後の色相彩度

先月の基礎講座で高木氏が「レベルやトーンカーブ補正後に色相彩度を適用すると、(補正によって生じた)ヒストグラムの櫛抜けの改善に効果がある」と述べていたが、検証してみた。

080719_hirano_3.jpg 色相彩度によるヒストグラム櫛抜け現象の改善

①色相彩度のうち彩度を増加してみると、ヒストグラムの櫛抜けが埋まるのがわかる。

ヒストグラムの移動はあまり感じられず形はトーンカーブ調整時点に似たままのようだ。

②明度の変更ではどうなるか色相彩度の中の明度を増加してみる。

結果はトーンジャンプのままヒストグラムの山が移動するのみで、櫛抜けは埋まらない。

なぜ彩度の調整で櫛抜けが埋まるのか、画像の部分にポインターを置いたまま、HSB 情報を確認してみると、彩度が調整されると、それに伴って明度も微妙に調整されているのがわかる。彩度が変わると微妙に明度が変わる分、ヒストグラムの隙間を埋めるような形で色の変わった部分が出来て櫛抜けが埋まるのではないだろうか。実はトーンカーブの調整でも明るさだけでなく彩度も微妙に変更されてる。この二つは密接な関係にあるのだろう。

ちょうど再読していた、早川廣行著「フォトショップCS 色調補正」にトーンカーブの説明があり、各種説明の最後に必ず色相彩度を加えていた、その説明が初めにはなくなぜかわからなかったわけだが、後のページに以下のような説明があったので疑問解消できた。

「彩度の調整は、色を鮮やかにするだけでなく、レベル補正やトーンカーブで乱れた階調のトーンを補う役目も果たしているからだ。」

DIGITABLE 七月定例勉強会

毎月第三土曜日は恒例の勉強会“DIGITABLE” の開催日である。DIGITABLE とは会の創設にあたって造語?したもので、見え見えだが「デジタルが(分かる)出来るようになる」だけではなく、「デジタルで自分のable(ability)=能力・可能性が広がる」というのを目指している。2007 年の2 月から毎月開催し、早や一年半経過したが果たして各位のability は広がったであろうか?

IMGP0007.jpg 0804_1919.jpg

土曜日の1時から5 時まで4 時間の開催、内容は自分と日本写真家協会の平野正志氏が講師役を務めそれぞれ80 分ずつ(本年度は自分が「デジタル基礎講座」、平野氏が「Photoshop 研究講座」を担当)あいだの80 分は、十数名の会員の“月番” の持ち回りによる「事例発表」となっている。いわゆる一方通行の講座ではなく、全員参加の大学のゼミのような形式を目指しているのだが、大方の大学生同様、会員達にはこの発表当番が重荷のようである。当方のように人前で写真家業を営むようになってくると心臓にも毛が生えてくるのか、「“自己主張” 出来ないサークルなんて…」と思うが、特に初回発表するまでは何とかして逃げたいものらしい。しかし発表を終えられた方は皆晴れ晴れしくよいお顔で、恒例のアフター会の飲み会でも快活にされているのを見ると人間はやっぱりきっかけなんだとつくづく思う。

さて、今日の月番は川添武久氏。化学製品製造会社で感光剤(感光性樹脂)などを扱っているため、「感光性樹脂について」についての発表であった。
感光剤の歴史から最新分野まで興味深く聞かせていただいたが、氏も気にしてたように考えてみれば感光剤=アナログ技術そのものである。その辺はあまりお構い無しにそれぞれの真摯な発表を楽しむ、それがこの勉強会の良さでもあろう。

写真家高木大輔のDIGITAL 研究室