デジタルカメラの設定②ホワイトバランス

デジタル画像の良し悪しを決める技術上の要件は露出とホワイトバランスだ。前者は基本的にはフィルム時代からの技術的要件をデジタルカメラに置き換えたものだったが、ホワイトバランスはデジタルカメラならではの特徴的な技術要件で、画像の美しさという点では決定的な要因となる。

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デジタルカメラの設定①

現在デジタル一眼レフのほとんどの機種では、JPEG とRAWの二形式で画像を記録することが出来る。RAW は「生」の意で、撮像素子から得られたままの、画像処理が行われる前のデータで、カメラや専用RAW ソフトを介し画像に展開し見ることが出来、後々かなり大幅な調整をすることが出来るというマニア向けのデータ形式だ。JPEG では撮影時に細かな設定や露出等を決定する必要があるが、いわばポジフィルムのようなもので、初心者には理解し易いだろう。

当講座では7 月までは、カメラをJPEG にセットして勉強を進めていく。
JPEG では記録時の画像サイズや品質を選ぶことが出来るが、作品づくりを目指すならラージ+ファインを常用にしよう。
残り枚数が減ってきて緊急避難的にはサイズはそのままにモードを落とすべき。その方が容量的に節約効果が大きいし、適正露出であれば差は目立ちにくい。

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RAW画像と調整Ⅰ

この二三日、二三の人から「ブログを見ました」という話を聞いた。
少なくともその二三人は見てくれているのである。…素直に嬉しい☆

ということで、腹ばかりたてていないで、まともなDIGITAL談義を進めていこう。夏休みだった私設勉強会“DIGITABLE”(ブログロールでリンク)の開校日も9月20日に迫っている。今日から二三回はそのテキスト執筆の予習でもある。(何事も無理をしないのが、ずぼらDIGITAL研究室のモットーである)

RAW画像の理解

以前にも述べたように、今日のデジタルカメラに使われる、CCD やCMOS は光の強弱を感じるだけで色に関する情報は持ってない。一般的なデジタルカメラは、ベイヤー配列のカラーフィルターを通してCCD が感光するしくみで、RGBの各色の元情報は歯抜けたものになっているが、例えばG チャンネルでは周辺のR とB 画素の情報から計算してRGB 全チャンネルの情報を持った画像を作り出している。
RAW 画像はRGB 全チャンネルの演算前に描きだされた“生”の画像で、そのままでは使えないが(=カラー画像にもなってない)、反面ソフト上での演算による色や明るさに対する調整域が極めて広いものになっている。
撮影時のカメラの設定がどうであれ、sRGB かAdobe RGB か?といったカラースペース(=色空間)や8bit か16bit か?といったビット数さえも自在に書き分けられる。

CameraRAW などのソフトの解説の項で後述するが、あまり言われてないことだが、拡大などのサイズ変更も、このRAW の展開時に一気に片付けた方が、JPEG にしろTIFF にしろPSDにしろ一旦ピクセルが“定着”してしまったものをいじるより、はるかに優位性がある。
JPEG 画像はカメラ内のASIC であらかじめ設定されたパラメータによりRAW 現像されて展開され、再びJPEG の設定サイズや品質段階に従って圧縮されて出てくるわけだ。それらの処理が終わった段階で、カメラ内でその都度元のRAW データが捨てられていると言ってよい。
このことを考えれば、RAW データは撮影後の調整の優位性があるのは当然のことだ。RAW とJPEG ではそもそも画像の段階が違うのだ。

080920_singousyori.jpg デジタルカメラ内の信号処理

デジタルカメラの内部では一瞬のうちに、これだけの仕事をしてメモリーカードなどに書き出すことが繰り返されている。
AD コンバータからの信号がそのまま出されたデータがRAW データで、JPEG はASIC(Application SpecificIntegrated Circuit)により調整と演算がされて書き出されている。

大和路の撮影で思ひしこと

「JPEG の撮影ブラケティング」

盆前に奈良、天理~明日香 と久しぶりにプライベートな撮影行に出かけてきた。
今月後半から始まるPENTAX での「PhotoshopElements6 講座応用編」の作例写真の“仕入れ” ということもあってカメラはK100D Super1 台、レンタル自転車の前カゴにバックをつっこんでの気楽な撮影である。
今度は講座の調整練習用の教材入手が目的であるからほとんどがJPEG 撮影、しかもソフトでの調整の余地を残したコマを得るのが目的であるからカメラ側でのブラケティング撮影と前回ブログに記載したのとはまるで逆の撮影となった。

結論から言うと、これが実に楽しい!

撮影地が侘び寂び溢れる大和路ということもあいまって、PENTAX のカメラ特有の画質に見事にマッチ、撮影後に下手な画像処理の入り込む余地のない上がりであった。

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作例はいずれも前後一段という大胆なブラケティングを使用しているが、BROWSER 上で展開してちょうどポジを判定するがごとく、久々に楽しい前別作業が行なえた。筆者の思うところそれぞれのコマに単なる適正露出の概念を超えた味わいがあり捨てがたい。ましてや(被写体とカメラのマッチングにもよるのだろうが)この後、姑息な調整などこの味わいを超えられるはずもない。考えても見れば、これこそ(=カメラ設定と露出に注意を払い、後工程の画像処理をしない)JPEG 撮影の醍醐味であろう。
ということでPENTAX のカメラと画づくりに感謝といったところであるが、肝心の画像調整用の教材作りにはまったく不首尾な結果となってしまった。
…世の中は上手くいかないものである。

DIGITABLE 七月定例勉強会 ーその2 ー

前述した19 日のDIGITABLE 勉強会で平野氏が「色調調整後の色相彩度」について言及されてたので、当方の研究?分野でもあり、同勉強会のレポートから引用する。

*色調調整後の色相彩度

先月の基礎講座で高木氏が「レベルやトーンカーブ補正後に色相彩度を適用すると、(補正によって生じた)ヒストグラムの櫛抜けの改善に効果がある」と述べていたが、検証してみた。

080719_hirano_3.jpg 色相彩度によるヒストグラム櫛抜け現象の改善

①色相彩度のうち彩度を増加してみると、ヒストグラムの櫛抜けが埋まるのがわかる。

ヒストグラムの移動はあまり感じられず形はトーンカーブ調整時点に似たままのようだ。

②明度の変更ではどうなるか色相彩度の中の明度を増加してみる。

結果はトーンジャンプのままヒストグラムの山が移動するのみで、櫛抜けは埋まらない。

なぜ彩度の調整で櫛抜けが埋まるのか、画像の部分にポインターを置いたまま、HSB 情報を確認してみると、彩度が調整されると、それに伴って明度も微妙に調整されているのがわかる。彩度が変わると微妙に明度が変わる分、ヒストグラムの隙間を埋めるような形で色の変わった部分が出来て櫛抜けが埋まるのではないだろうか。実はトーンカーブの調整でも明るさだけでなく彩度も微妙に変更されてる。この二つは密接な関係にあるのだろう。

ちょうど再読していた、早川廣行著「フォトショップCS 色調補正」にトーンカーブの説明があり、各種説明の最後に必ず色相彩度を加えていた、その説明が初めにはなくなぜかわからなかったわけだが、後のページに以下のような説明があったので疑問解消できた。

「彩度の調整は、色を鮮やかにするだけでなく、レベル補正やトーンカーブで乱れた階調のトーンを補う役目も果たしているからだ。」

DIGITABLE 七月定例勉強会

毎月第三土曜日は恒例の勉強会“DIGITABLE” の開催日である。DIGITABLE とは会の創設にあたって造語?したもので、見え見えだが「デジタルが(分かる)出来るようになる」だけではなく、「デジタルで自分のable(ability)=能力・可能性が広がる」というのを目指している。2007 年の2 月から毎月開催し、早や一年半経過したが果たして各位のability は広がったであろうか?

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土曜日の1時から5 時まで4 時間の開催、内容は自分と日本写真家協会の平野正志氏が講師役を務めそれぞれ80 分ずつ(本年度は自分が「デジタル基礎講座」、平野氏が「Photoshop 研究講座」を担当)あいだの80 分は、十数名の会員の“月番” の持ち回りによる「事例発表」となっている。いわゆる一方通行の講座ではなく、全員参加の大学のゼミのような形式を目指しているのだが、大方の大学生同様、会員達にはこの発表当番が重荷のようである。当方のように人前で写真家業を営むようになってくると心臓にも毛が生えてくるのか、「“自己主張” 出来ないサークルなんて…」と思うが、特に初回発表するまでは何とかして逃げたいものらしい。しかし発表を終えられた方は皆晴れ晴れしくよいお顔で、恒例のアフター会の飲み会でも快活にされているのを見ると人間はやっぱりきっかけなんだとつくづく思う。

さて、今日の月番は川添武久氏。化学製品製造会社で感光剤(感光性樹脂)などを扱っているため、「感光性樹脂について」についての発表であった。
感光剤の歴史から最新分野まで興味深く聞かせていただいたが、氏も気にしてたように考えてみれば感光剤=アナログ技術そのものである。その辺はあまりお構い無しにそれぞれの真摯な発表を楽しむ、それがこの勉強会の良さでもあろう。

写真家高木大輔のDIGITAL 研究室

Photoshop Elements 講座 

新宿のPENTAX での「Photoshop Elements6.0 講座」が始まった。毎週1 回二時間の授業を3 週で1 クールという短期集中型の講座だが、昨年「なんとなく…」開始して以来、始めはこちらもPENTAX の会員さん達には無名で閑古鳥であったが、会を追うごとに参加者が増え8 クール目となり、ありがたいことに今回も募集定員15 名満員打ち切りの盛況である。

“当方の努力の賜物☆…” といばりたいところだが、むしろ会員さん達の熱心さに引っ張られた結果であり、当方も 講師よりずっと年長の会員さん達に毎回いい感じの刺激をたくさん頂戴している。上には90 歳前後の受講者もおり、いわずもがな並みの(失礼)御歳には見えない。教室でのやりとりも年齢差を感じるようなことは全く無く、教える側も教えられる側も好奇心旺盛な少年(少女)時代に戻っての

楽しいひと時である。このあたり、叫ばれている「生涯教育」のデジタル画像講座の有効性?を大いに感じるが…。

それはさておき、Photoshop Elements 講座である。

高機能高価格で専門家向けに特化しつつあるPhotoshop CS シリーズに比し、今日の一般的なデジタルカメラユーザー向けに特化した戦略商品として、大いに意気込みが感じられるが、正直少々とまどう面もある。

まず、意気込みゆえの?頻繁なるバージョンアップである。既にPhotoshop Elements5.0 にバージョンアップされたのを期に昨年講座が開始したのであるが、何ヶ月も経たないうちに6.0 にバージョンアップされてしまった。元来が“お買い得感” の強い廉価版ソフトであり個人個人ではさほどの出費にはならないが、講座開設用に投資したばかりのPENTAX さんなどの辛さは想像に難くない。

また、その多機能化ゆえの混乱と弊害もある。今バージョンから従来のスタンダード編集、クイック編集に加え、新たにガイド付編集が加わり、編集機能は豪華?三本立てとなったが、果たしてこじつけのオマケのようでその存在意味が未だによく解らない。教える側がこの調子ではたまったものではないが、幸いよくしたもので当教室に限っては年長の分別者揃いが故に、当方の「あまり必要ないでしょう…」

などとはなはだ頼りない説明も素直に受け止めていただいている。

 意図がよく分らん?ガイド付編集

もう一つ困るのは機能と“訳語” の不統一だ。だいたい前述のように「○○編集」モードなどといっているが、これはどうして「○○補正」モードとしないのか?

このあたりはあまり日本語を気にしない“お若い人” 向けの発想で、「行け行け!ドンドン…」という感じで翻訳作業が進められているのだろうか?こういうことには以外に引っかかる分別者揃いの当教室では「よく稟議が通ったなぁ?」などと溜息をついているが、そもそも「稟議」なんて発想がもう死後なのであろうか?…。

例によって長くなった、続きはまた後日。

デジタルカメラはどう写るのか?(続き) 

*デジタル画像の特長

前述のようなCCD の配列や構造ゆえに、デジタルカメラでは本来無い偽色やモアレ、フレアが発生しやすく、またそれらを緩和する目的のローパスフィルターなどの影響でそのままでは鮮鋭さを欠く傾向がある。デジタル画像はその生成のしくみゆえに、宿命的な弱点を内包している訳だ。

Moire1.jpg DSCF0441.jpg モアレのしくみと実際(拡大します)

ゆえに画像撮影時のカメラ内での画像生成処理や、その後のパソコン上での調整作業も多くはこの宿命を緩和、補完するのが目的となる。デジタル画像の調整前にこのこと頭に入れておくとおくと、調整の限界や方法についての理解が進み易い。

尚、RAW 画像はRGB 全チャンネルの演算前に描きだされた“生” の画像で、そのままでは使えない訳だが、反面ソフト上での展開時における演算作業そのものを調整するため、色や明るさに対する調整域が極めて広いものになっている訳だ。

*ベイヤー型以外のCCD の試み従来のイメージセンサーは、1 つのピクセルで1 色しか取り込まないため、残りの2 色は複雑な計算によって補間する。そのため画像のディテールが失われると同時に偽色が発生するなどの欠点がある。

一般的には避けられないこの宿命構造には蓋をして、その対処療法でしのぎを削り商売に勤しむメーカーが大半の中、この哲学的な宿命に真っ向から取り組む、果敢なパイオニア精神溢れる少数メーカーもあるようで、例えばシグマSD10 で採用されているFoveon X3 ダイレクトイメージセンサーは偽色やモアレの発生を抑えるという。(図はシグマ社のHPより転載)

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シグマSD10 で採用されているFoveon X3 ダイレクトイメージセンサー 偽色やモアレの発生を抑えるという

またそこまで真っ向切った勝負とはいえないが、フジS シリーズに搭載のスーパーハニカムCCD のようにベイヤー配列を大小二種類の八角形構造に置き換え、その欠点を緩和していこうという現実的に歩留まりのよい路線を提唱するメーカーもあり、筆者も好みとするところである。“ネガフィル並みの広ダイナミックレンジ” が売りだが、偽色やモアレの低減にも有利な構造といえる。

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フジS5Pro に搭載のスーパーハニカム

CCD “ネガフィル並みの広ダイナミックレンジ”が売りだが、モアレの低減にも有利な構造